2010年07月12日
参院選に見た脱官僚の難しさ
7月11日投開票の参院選で民主党が大敗した。1年前、昨年8月の衆院選で民主党は国民の圧倒的支持を得て、今年の参院選でも過半数をとり、盤石の政治態勢を獲得するのではないかと予想されたが、現実は甘くはなかった。昨年の歴史的政権交代について、筆者は民主党が「官僚支配」に対してレッドカードを突きつけたのに国民が喝采を送ったことが背景にあったと理解してきた。2005年夏の総選挙では小泉純一郎元首相が郵政民営化を掲げて大勝した。自民党内の“抵抗勢力”を排除した背水の陣だったが、多くの国民は小泉首相に喝采を送った。小泉首相の人気は官僚政治打破を訴えたからだと考えている。昨年の総選挙でも民主党は「脱官僚」を御旗に掲げたから国民の支持を得たのに、いつの間にか官僚依存に傾斜していた。鳩山首相が普天間や政治資金問題で迷走したことは確かだが、国民は民主党政権が官僚との対立姿勢を失い始めたことを直観的に感じ取っていたはずだ。その証拠に、「脱官僚」をアジェンダに掲げたみんなの党に今回大きな風が吹いたのだ。
民主党の昨年のマニフェストの柱は、子ども手当と高速道路無料化だった。この二つの政策の要諦は、政策への官僚の関与が著しく低下する効果を持っていることである。野党や多くのメディアは「財源確保」を争点にしたが、筆者はそうは思っていない。官僚たちは新しい法律ができるたびに数多くの外郭団体をつくって、OBの天下り機関としてきた。日本の国家財政が健全だったことはまずない。いつも財政再建がうたわれてきたが、その度に財政規模が拡大するという悪循環を繰り返してきた。
前者の子ども手当は、国民に直接お金を給付する仕組み。初年度は取りあえず15歳までの子ども一人ずつに月額1万3000円を支給する制度が始まった。財源がないのならこれでとどめてもよかったのに、満額にこだわり来年度以降は保育所の整備など行政が関与できる分野がとめどもなく広がりそうな勢いなのだ。
高速道路についても、通行量が少ない地方の道路だけの無料化“実験”を始め、“余って予算”で建設費を支出することになった。無料化とは料金所がなくなることである。3つの高速道路会社は料金徴収のためにわざわざ子会社を設立し、1万人を超える人員を配置している。この人件費がなくなるだけでも歳出の大幅カットが可能のなのだ。民営化された高速道路会社はファミリー企業を多く抱え込んだままなのが実態で、歳出カットをさらに薦める必要があるのだ。
菅首相は首相指名に当たり「強い経済、強い財政、強い社会福祉」というスローガンを打ち出した。社会福祉のために歳出を打ち出せば、雇用が生まれ、所得が生まれ、税収も増えると訴えているが、歳出増は官僚にとって最もうまみがある。介護で働く人々のほとんどが正規社員でない。収入は税込みで20万円足らず。時給にして千円ちょっと。介護保険から介護業者には3、4千円が支払われているはずなのに、どこかで消えてしまっている。そもそも月収20万円程度の収入では所得税の課税水準に遠く及ばない。ここらも国民は「うさんくさい」と感じ取っているはずだ。
なぜ、「脱官僚」を目指した政権が官僚におもねるようになるのか。必ずしも民主党だけの責任とはいえないものがある。自民党と言えども、巨大な行政機構を運営するノウハウを持ち得ていなかった。官僚のつくったシナリオに乗せられてあうんの呼吸で行政を行ってきたのが自民党だった。官僚のシナリオに従っている限り、有能な閣僚を演じることができたのだ。
官僚の統治は前例踏襲主義だ。前例を踏襲していれシナリオは書き換えで済むし、ミスはほとんどない。日本が90年代以降、時代の大きな変化に対応できていないのは、誰も巨大な行政機構のシナリオの全面的に書き換えようとしなかったからだ。政治家が「脱官僚」というなら官僚としてはお手並み拝見とばかりに高みの見物をよそおうことも可能である。自民党の閣僚たちはあえて官僚たちの利権に手を突っ込むこともなく任期を全うしてきた。
民主党政権で期待された長妻昭厚生労働相や前原国土交通相らが最近元気がないのも、シナリオの書き換えの難しさに頭を悩ましているからに違いない。筆者はそう想像している。民主党に肩を持っているのではない。閣僚となって「よし改革してやろう」と乗り込んでいってもパンドラの箱を開ける勇気と能力を持つ人材はそうはいないはずだ。
民主党の参院選の敗因はひとえに「脱官僚」を捨てたことにある。たぶんこれから敗戦の責任をめぐって政局が揺れることになるのだろうが、いまや内輪もめをしている季節ではない。愚直に事業仕分けを続ければいい。そうすれば渡辺喜美氏率いるみんなの党との連立の道も開ける。民主党を支持する国民は民主党が国民新党と連立を組む意味をいかぶっているはずだ。敗戦を奇貨として新たな連立の道を模索することを期待する。(伴武澄)
前者の子ども手当は、国民に直接お金を給付する仕組み。初年度は取りあえず15歳までの子ども一人ずつに月額1万3000円を支給する制度が始まった。財源がないのならこれでとどめてもよかったのに、満額にこだわり来年度以降は保育所の整備など行政が関与できる分野がとめどもなく広がりそうな勢いなのだ。
高速道路についても、通行量が少ない地方の道路だけの無料化“実験”を始め、“余って予算”で建設費を支出することになった。無料化とは料金所がなくなることである。3つの高速道路会社は料金徴収のためにわざわざ子会社を設立し、1万人を超える人員を配置している。この人件費がなくなるだけでも歳出の大幅カットが可能のなのだ。民営化された高速道路会社はファミリー企業を多く抱え込んだままなのが実態で、歳出カットをさらに薦める必要があるのだ。
菅首相は首相指名に当たり「強い経済、強い財政、強い社会福祉」というスローガンを打ち出した。社会福祉のために歳出を打ち出せば、雇用が生まれ、所得が生まれ、税収も増えると訴えているが、歳出増は官僚にとって最もうまみがある。介護で働く人々のほとんどが正規社員でない。収入は税込みで20万円足らず。時給にして千円ちょっと。介護保険から介護業者には3、4千円が支払われているはずなのに、どこかで消えてしまっている。そもそも月収20万円程度の収入では所得税の課税水準に遠く及ばない。ここらも国民は「うさんくさい」と感じ取っているはずだ。
なぜ、「脱官僚」を目指した政権が官僚におもねるようになるのか。必ずしも民主党だけの責任とはいえないものがある。自民党と言えども、巨大な行政機構を運営するノウハウを持ち得ていなかった。官僚のつくったシナリオに乗せられてあうんの呼吸で行政を行ってきたのが自民党だった。官僚のシナリオに従っている限り、有能な閣僚を演じることができたのだ。
官僚の統治は前例踏襲主義だ。前例を踏襲していれシナリオは書き換えで済むし、ミスはほとんどない。日本が90年代以降、時代の大きな変化に対応できていないのは、誰も巨大な行政機構のシナリオの全面的に書き換えようとしなかったからだ。政治家が「脱官僚」というなら官僚としてはお手並み拝見とばかりに高みの見物をよそおうことも可能である。自民党の閣僚たちはあえて官僚たちの利権に手を突っ込むこともなく任期を全うしてきた。
民主党政権で期待された長妻昭厚生労働相や前原国土交通相らが最近元気がないのも、シナリオの書き換えの難しさに頭を悩ましているからに違いない。筆者はそう想像している。民主党に肩を持っているのではない。閣僚となって「よし改革してやろう」と乗り込んでいってもパンドラの箱を開ける勇気と能力を持つ人材はそうはいないはずだ。
民主党の参院選の敗因はひとえに「脱官僚」を捨てたことにある。たぶんこれから敗戦の責任をめぐって政局が揺れることになるのだろうが、いまや内輪もめをしている季節ではない。愚直に事業仕分けを続ければいい。そうすれば渡辺喜美氏率いるみんなの党との連立の道も開ける。民主党を支持する国民は民主党が国民新党と連立を組む意味をいかぶっているはずだ。敗戦を奇貨として新たな連立の道を模索することを期待する。(伴武澄)
この記事へのトラックバックURL
http://ch01617.kitaguni.tv/t1691523
この記事へのコメント
みんなの党も自民の別働隊な訳だから、同根ですよ。
根本は宗主国の支配からの脱皮にあるのでは?。
ボランティアの甘い心情では政治は適わないでしょうね。
根本は宗主国の支配からの脱皮にあるのでは?。
ボランティアの甘い心情では政治は適わないでしょうね。
Posted by 野次馬 at 2010年07月12日 07:05
10年の混乱を覚悟すれば、宗主国との離別も可能になるかもしれませんが、
中国たたき、日本が韓国たたきと続けていれば不可能に近い。日中韓の融合がまず必要だと思いますよ。
中国たたき、日本が韓国たたきと続けていれば不可能に近い。日中韓の融合がまず必要だと思いますよ。
Posted by Yorozubampo
at 2010年07月12日 10:06
at 2010年07月12日 10:06ん?
何故みんなの党?
小泉竹中カイカクなんてもうたくさんなのに!
「民み」連立なんて最悪。
「民国社」が何でダメなの?
何故みんなの党?
小泉竹中カイカクなんてもうたくさんなのに!
「民み」連立なんて最悪。
「民国社」が何でダメなの?
Posted by 水沢アキの近所 at 2010年07月14日 11:56


